第25回目の今回は、視線推定の手法の1つをご紹介します。
視線推定手法は、近赤外の点光源(LED)を用いた手法と、カメラのみを用いて通常の画像から視線を推定する手法の2つに大別できます。今回は、前者の近赤外を用いた手法を紹介します。
視線計測の基本原理
視線計測では、まず目の動かない部分(基準点)と、動く部分(動点)を検出します。そして、基準点に対する動点の位置に基づいて視線を求めます。例えば、基準点よりも動点が上側に移動すれば上を見た、下側に移動すれば下を見たと推定できます。この位置関係を定式化することで、5度上を見たということも求められるわけです。
図1 視線計測の基本原理
近赤外の点光源を用いた手法
近赤外の点光源を用いた手法では、近赤外の点光源により目を照明し、角膜で反射された光(プルキニエ像)と瞳孔の位置から視線方向を求めます(図2)。この手法では、プルキニエ像が基準点、瞳孔が動点になります。左目の画像を例に説明すると、角膜反射(プルキニエ像)よりも瞳孔が外側(目じり側)であれば、左側を見ていると推定できます。また、プルキニエ像よりも瞳孔が内側(目頭側)にあれば、右側を見ていることになります。この手法では、誤差1度程度で視線を計測できると言われています。
図2 近赤外の点光源を用いた視線計測の概要
近赤外の点光源を用いた手法のメリット・デメリット
この手法のメリットは、精度が良いことです。プルキニエ像を、画像処理で安定的かつ高精度に検出できるためです。
デメリットは、赤外光源によって目領域を照明する必要があるため、視線の検出可能範囲が光の届く距離に限られることです。また、赤外照明が必要なため装置が複雑になり、値段が高くなってしまいます。
この近赤外の点光源を用いた手法は、第24回で紹介したTobii社の製品にも採用されています。
次回は、カメラのみを用いての画像処理によって視線を推定する手法を紹介します!